進化する「黒塚」
四代市川猿之助舞台写真展
1月13日(金)→1月28日(土)
但し14日(土)は、16時で終了。21日(土)は、お休みです。
お茶の水エスパスビブリオ 12:00~19:00
「黒塚」は能の「黒塚」を元にして、二代目猿之助(初代猿翁)により1939年(昭和14年)に初演されました。
この歌舞伎舞踊は、二代目が若き日に洋行して目にしたバレエ・リュスの影響であるとされていますが、実際に観た演目が何であったのかは、定かではありません。その心理描写の深さにおいて「白鳥の湖」ではとも連想されています。能を原作とする歌舞伎演目は松羽目の背景で上演されるものが殆どですが、一面の芒の原と巨大な月が背景を彩り、踊りもロシアンバレーやコサックダンスを導入するなど当時としては非常にモダンで先鋭的な作品でした。
以後、三代目猿之助(団子改め)の襲名、そして、四代目猿之助(亀治郞改め)の襲名で演じられたことで、猿之助三代の家の藝となりました。
四代目猿之助は、2012年7月新橋演舞場での初演から、13年3月名古屋・御園座、12月京都・南座、そして、2015年1月新装歌舞伎座初出演となった初春公演、そしてこの春、襲名以来2度目となる新橋演舞場と5年にわたり「黒塚」を演じてきました。
今年は、初代猿翁の「黒塚」初演から77年目を迎えます。「絶えず進化を取り入れることが伝統を継承生すること」との持論を持つ四代目が公演を重ねてきた各劇場における「黒塚」の進化を垣間見ていただければ幸いです。舞台撮影・齋藤芳弘
展示構成
第一景
高僧の祐慶ら一行が、老女岩手(実は鬼女)の庵に立ち寄り、老女は糸車を廻しながら自分の不幸な生い立ちを語り、それから決して閨(ねや)の中を見るな、と言い置いて、薪を拾いに夜の山に出掛けます。しかし、お供の強力が、粗忽に中を見てしまうので、老女が鬼女であることが分かります。
第二景
老女が杖を片手に踊ります。この踊りが全体の眼目で、バレーの動きと古典的な日本舞踊の動きとが一体化した、非常に独特の雰囲気です。そこに強力が逃げて来るので、鬼女はその本性を現し、それから芒の原に背面飛びのようにして、姿を消します。この後半は如何にも四代猿之助のケレン仕立てで、前半の踊りとの対比も鮮やかです。
第三景
能の後シテの部分で、鬼女は隈取をした長袴姿で、荒事の藝を見せます。花道での直立したまま朽木のように前に倒れる「仏倒れ」の技巧もあります。