エスパス・ビブリオ、店主の齋藤芳弘です。
私が代表を務める「ナガサキの郵便配達」制作プロジェクトについてのお知らせです。
予てより制作中だった「ナガサキの郵便配達」という本が
去る8月9日、長崎の原爆が落とされた日に3年がかりで上梓できました。
この本は、73年前に郵便配達の途中で被爆した
16歳の谷口稜暉(すみてる)少年の壮絶な被爆体験、原爆の悲劇、後遺症の恐ろしさ、
核兵器の廃絶と恒久平和への運動に一生を捧げた谷口さんの人生と、
日本が戦争を始める時の国際情勢や日本政府と軍部の戦争に至る動き、
8月6日に広島、8月9日に長崎に原爆が落とされたいきさつ、
そして、終戦に向かう時の状況、
特に軍部と天皇陛下の御前会議でのやりとりなどが詳細に記述され、
唯一の戦争被爆国である我々日本人が知り得ない数々の事実に愕然とします。
まさに戦争の虚しさを描いたドキュメンタリー小説です。
著したのは、第2次世界大戦で数々の武勲をたて、
イギリスの英雄と謳われた元イギリス空軍のパイロット、ピーター・タウンゼント。
彼は退役後にイギリス王室の武官を勤め、マーガレット王女との悲恋が世界中に知れわたり、
映画「ローマの休日」の中で新聞記者役のグレゴリー・ペックのモデルとも言われています。
その後、王室を離れ、平和の本を書くために世界中を旅し、
長崎で谷口さんと運命的な出会いを果たします。
来る日も来る日も、谷口さんの体験を聞き、その他の被爆者や
医者、教師、軍の関係者などを精力的に取材して1984年にこの本を書き上げました。
The Postman of Nagasakiのタイトルでイギリスとフランスで出版され、
日本では34年前の1985年にフランス語版の翻訳が早川書房から発売され、
高校の国語の教科書にその一部が16ページにわたり掲載されましたが、
すぐに絶版となり、広く読まれることはありませんでした。
私は、お元気な頃の谷口稜暉さんにお目にかかった折りに、
ピーター・タウンゼントさんが書いた英語版からの翻訳を託されました。
それから3年あまりの月日が経ち、
谷口さんはこの本の完成を待たずに天国に旅立たれてしまい、悔やみきれない思いですが、
いま、谷口さんの一周忌直前に立派な上製本として誕生しました。
読み比べますと章立ても16章と25章、9章も長く、内容的にも、谷口さん以外の被爆者の方達、
そして、捕虜として南方の戦場から長崎に連れてこられ、
捕虜収容所で被爆したイギリス人兵士の記述など、タイトルは同じでも、
似て非なる、「完全邦訳版・ナガサキの郵便配達」となりました。
価格も8月9日を忘れないという意味を込めて809円にこだわりました。
ノーベル平和賞を受賞した「I CAN」の活動や、核兵器禁止条約の国際連合での採決が進まない今、
出版の意味は大変重要なものと考えられます。
この本は皆様からの寄付で制作費を賄う
持続可能な出版活動としてプロジェクトを立ち上げました。
長崎の高校生に「平和の教科書」として無料で贈呈し読んでいただく活動をはじめています。
その資金集めのためのクラウドファンディングも立ち上げましたが、なかなか思うように集まりません。
寄付をする行為を平和運動への参加とお考えいただき、ぜひお気持ちをお寄せいただき、
「ナガサキの郵便配達」制作プロジェクトをご支援いただければ幸いです。
●A-port(クラウドファンディングサイト)で募金活動を行っています。
https://a-port.asahi.com/projects/the-postman-Nagasaki/
●イザベル・タウンゼントさんをお迎えした「ナガサキの郵便配達」制作プロジェクト記者会見の様子
https://youtu.be/jkWAU2RlAFM
「ナガサキの郵便配達」制作プロジェクト・代表
齋藤芳弘